夏期講習の風景
夏期講習が始まりスタートダッシュを決めている子供がいる。
休憩時間になると
作業系の社会、理科の宿題を黙々とこなしている。
学校のドリルをどんどん終わらせていく。
ある子は苦手分野を克服すべく問題集に没頭している。
難問に顔を引き攣らせながら
山を越えていく。
計算問題をひたすら解いている者もあれば、
読書感想文の推薦図書に指定されている
小説を読み耽る者もいる。
時計の秒針を打つ音が教室に響く。
休み時間なのに静かな教室である。
子供が自主的に課題に打ち込んでいる姿を見ると
何か心が揺さぶられる。
こちらも鉢巻を締め直す。
この子たちのためにと
気持ちが高まる。
卑怯な花子
宿題のケース
この雰囲気に水をさす子供がいる。
花子である。
一見すると真面目に取り組んでいて
いたって良好な様子である。
がんばるぞという雰囲気は醸し出している。
しかし、宿題のチェックになると
花子の様子が一変。
各自の机で宿題の確認をしていると、
急にトイレに行くと言い出す。
こちらは全員の宿題を確認するのに
精一杯で余裕がない。
さらに授業時間が短いので
確認作業に時間が取れない。
バタバタなのだ。
いつの間にかこちらも花子の存在を
忘れてしまう。
授業が始まると
タイミングを見計らったように
教室に戻ってくる。
宿題のことを忘れているようだと
ニコニコしながら愛想を使って
席に着く。
こちらの機嫌が悪そうだと
お腹が痛いなどと言いながら
席に着く。
明らかにお説教モードになっているときは
職員室に直行。
他の先生に連れられて教室に戻ってくる。
こちらの様子を観察しながら
教室に入ってくる態度を決める。
名女優である。
授業が終わると馴れ馴れしい。
こちらに寄ってきて
調子良くいろんな話をしてくる。
その様子を苦々しい顔で
見ているクラスメイト。
そんな目に気づかないお調子者である。
小テストのケース
授業中に毎回小テストを行う。
以前は隣の人と交換をして採点をしていたが、
コロナ禍で自己採点が原則になった。
答えを黒板に書いて自分で採点してもらう。
色々な言葉を呟きながら、
採点を進めていく。
「覚えていたのに、悔しい」
「また間違った」
「書いて覚えよう」
花子はいつも涼しい顔。
結果を聞いていくと
いつも、満点。
宿題を一度もきちんと提出したことがないのに
満点。
宿題の内容が頭に入っていないのに
満点。
天才少女である。
正義感あふれる生徒が報告に。
「花子さんは黒板を見ながら書き換えている」
彼は卑怯な花子を許せないようである。
周囲の目が厳しくなっているのに
本人は一向に気づく気配がない。
そうこうしているうちに
教室から花子の友達は姿を消していく。
多分、夏期講習の後半になれば、
自宅学習に切り替えているのは目に見えている。
花子の影にモンスターが
この手の子供のお説教には注意が必要。
保護者も面倒臭いのが相場だ。
経験で分かる。
注意した途端に電話が鳴り響く。
クレームの電話である。
「どうして子供を信じないのかと」
「うちの子供が嘘をつくはずがない」
と。
あー面倒臭い。
こんな面倒臭い親子を相手にするなら
先程の頑張っている子供に時間を注ぐ。
だから、ベテラン先生になると
花子は放置される。
大人が作った花子
保護者の昔
昔は保護者に協力してもらって
子供の卑怯を矯正していった。
塾での次第を事細かに説明して
家で注意してもらう。
保護者も塾での悪事を
教えて欲しいと言っていくる。
伝えると真剣に叱っていた。
しっかりと矯正をしてくる。
塾で注意してしまうと、
晒しものになってしまう。
特に女の子には気を遣う。
男の子と違って
女の子は難しいのである。
ところが今は保護者が
理解してくれない。
協力者にならない。
その分、矯正が難しい。
子供を盲信している。
いや、違う。
「子供大人」が一杯
親が何か悪いことを
言われるのを異常に嫌がる。
悪いことを聞き入れる度量がない。
注意される免疫がない。
成績が芳しくないことを
伝えただけで
機嫌が悪くなる親が増えた。
つまらないことでも
褒めるとご機嫌なのである。
子供純真な心を持った
大人が多いような気がする。
私の身内にも恥ずかしながらいる。
大学を出て
すぐに結婚。
社会に出て大人として怒られた経験がない。
「子供大人」の誕生である。
この「子供大人」、
本当に聞き分けが悪い。
旦那の実家に来ても
お客さん気分。
旦那と義理の母が話している時も
始終、スマホと会話している。
呆れて、何も言えない。
こんな「子供大人」が子供を育てると
どうしようもない花子が誕生する。
これが中学生になると
もう、手が付けられない。
中学生になった花子の話をたまに耳にするが
あまりいい噂を耳にしない。
不登校になった。
ヤンキーになっている。
家で暴れている。
引きこもっている
・・・・・・
ツケが回ってきたようである。
小学生の間ならまだ矯正ができたのに。