ゴルフ徒然
ゴルフ狂の詩
ライター

蝉の住処 小話64

ここのところいいお天気が続き、布団を干すには絶好の日和。

我が家のベランダは東に向いているので、午前中に干すのがベスト。

お昼を過ぎる頃になると、太陽が西に移動してベランダは一気に暗くなる。

せっかく晴れているのだから、眠たい目を擦りながら起床。

カーテンを開けて一気に布団を干す。


昼過ぎ、気づくとベランダは暗くなりかけている。

そろそろ布団を取り入れる時間だと言うことで、ベランダに出て取り込む作業を開始。

埃を払うために布団をはたき始めると、蝉がしがみついているではないか。

何度払っても、布団に舞い戻ってくる。

よほど心地が良かったのか。

かわいそうな気持ちを押し殺して、追っ払うことに。

舞い戻ること4回。

5度目にとうとう諦めてどこかへ飛んでいってしまった。

少し可哀想なことをしたかなと罪悪感が込み上げてきた。


やって見つけた安住の地。

柔らかい布団の感触は最高だったのだろう。

こんなの初めて。これはなんという木なのか。

残り少ない命を全うするための終の住処と決めていたのかもしれない。

見つけたのも束の間。

敢えなく引っ越しの憂き目に会うことになった蝉。

ここのところ引っ越しをするかどうかで迷っている。

憧れの鎌倉に行こうかとネットで物件を物色している。

なかなか適当な物件が見つからない。

今の所に引っ越して来た当初は理想の物件に入れたことを喜んでいた。

何年か過ごしているうちにこの地から離れたくなってきた。

家の周りの環境を知れば知るほど、こんなはずでは。

散歩をするのに適した場所がない。

家が密集して息が詰まりそう。

ダイソンの空気洗浄機の情報では、空気はいつも汚い。

景色が良かったベランダの前にはいつの間にか都営住宅が立ち並んだ。

神様か先祖が私の布団をパタパタ叩いているのかも。

そろそろ本当の理想の場所に行くんだぞと。

そんな声が聞こえてくるようなこないような。

いざ、鎌倉へ。