中学受験
中学入学試験には子供に特別な能力が必要なのでは？
はっきり言って必要ない。
たかだか小学生が勉強する内容である。
そんな知識を吸収するのに難しいはずがない。
心が健全であれば誰でも通過できる橋。
ただ、必要とされるのは大人の覚悟。
子供の苦しみを理解し、
その心に寄り添ってあげることが
できるかどうか。
自分の楽しみを傍に置き、
子供の一挙手一投足に集中できるか。
子供の犠牲をしっかりと
背負ってあげることができるのか。
こういった部分にかかっているのだ。
大人の精神が合格を決める。
テレビCMの女将さんのセリフ
「そこに愛はあるんか」
である。
早熟の功罪
早いうちから受験勉強をさせていなかったので
もう手遅れではないかという相談を受けることがある。
確かに小学校入学と同時に入塾させて、
早く入試の準備をするという手はある。
合格させる一つの有力な方法だろう。
早ければなんでも有利であることは間違いない。
ただ、掛かる資金は莫大に膨れ上がる。
それだけならいいのだが、
子供の勉強に対する精神もかなり歪められる。
一見有利に見える方法だが
かなり危険な副作用をはらんでいる。
人は自分から進んでやることに対して
楽しいと言う感情を起こす。
それがたとえどんな苦難の道であろうともである。
だが他人に強制されてやらされているものに対しては
嫌悪感しか抱かない。
小さい頃から受験勉強を無理矢理させられてしまうと
学ぶことに対して歪んだ姿勢をとるようになる。
自分から学ぶと言う積極的な姿勢も影を潜め
学習の中に楽しみを見出すことなどない。
勉強を楽しいと思わなくなった子供は
学びに対してストレスの感情しか起こさなくなる。
人生は勉強そのものである。
こんな時期に学びに疲れてしまうと、
大人になってからの学びから
逃避することしか考えなくなる。
受験戦士ガンダム
私たち第二次ベビーブーム世代はよく
「受験戦士ガンダム」
と揶揄された。
当時社会現象にまでなった
「機動戦士ガンダム」をもじった言われ方だ。
当時の傍観者たちが
受験勉強の弊害を予感して吐いた言葉だ。
親たちは高学歴さえ身に付ければ
人生は安泰だと安易に考えた。
そのために塾に通わせ、
私立に進学させ、
学歴をつけることのみに躍起になった。
同世代に溢れかえった「受験戦士ガンダム」の成れの果てを
どれだけたくさん、見てきたか。
人が憧れる社会的身分にある者が、
子供としか思えないような遊びに興じている。
弁護士や医者といった社会的地位のある者たちが
キャバクラやガールズバーといったようなところで
夜な夜なつまらない話をして遊び呆けているのである。
病気を患っている患者から集めた
莫大なお金を握りしめ、
カジノに興じる馬鹿な医者もいる。
仕事にストレスを感じているとのことだ。
現実を見れば聞けば
呆れ返るばかりである。
自分の仕事にストレスを感じるというのは
その人間に向いていない職業だからだ。
社会の迷惑にならないうちに早くやめるのが賢明。
天から与えられた使命
本当にその職業を熱望し、
困難と向きあえる人は必ずこの世の中には存在している。
そういった人が社会的使命を果たす
崇高な仕事につけないのは社会の不幸。
彼らならこういった仕事に対するストレスは
きっとやり甲斐に感じることであろう。
現代社会が幼稚化しているのは
この大人たちが躍起になった
受験戦争の結果。
本来の使命を子供から奪ってしまったこと。
逆に高学年の途中で入塾してきた子に多いのが
学習に対する興味の尽きない姿勢である。
彼らは授業中、目を輝かせながら
新しい知識を吸収していく。
与えられた課題に対しても
興味を持って取り組む。
テストでは吸収した知識を応用して、
古参の塾生よりもはるかに良い成績を収める。
頼もしい新参者たちである。
教室では
しかし、残念だが教室に溢れかえるのは
死んだ魚の目。
長い間、塾に籍を置き、
机にへばり付いている子供たち。
あまりの疲労感に、
死んだように寝ている子供もいる。
大人の間違った考えによって
飼われたペットたち。
強制されて勉強した子供の現実の姿だ。
特等席
塾では子供の精神の成れの果てを見られる。
次世代の縮図を垣間見ることもできる。
子供たちが壁の前で立ち尽くし
四面楚歌にどうすることもできず、
苦悩に歪んだ顔が教室に並ぶ。
教壇は子供の未来や次世代の社会を見渡せる
特等席。
今のところ美しい景色は見えてこない。
子供の心と寄り添い
子供が抱く未来像を共有する。
その未来像の実現に向けて、
大人としてできる手助けを見極める。
知恵と経験に満ちた
大人からの力強い言葉に子供の瞳は輝く。
教室に活気がよみがえる。
そんな光景の見える特等席に座りたい。
自分に言い聞かせるあのセリフ。
女将さんの心の叫びを
「そこに愛はあるんか」
