ゴルフ侍
毎回楽しみにしている番組がある。
その名もゴルフ侍、見参。
トップアマチュアがシニアプロに
自身のホームコースで勝負を挑む番組。
エレファントカシマシの曲が流れる中、
アマチュアの仕事紹介、
人並みならぬ苦労や努力が
ナレーターによって語られる。
そして曲がチェンジ。
シニアプロの華々しい実績、
下積み時代の苦労が紹介される。
人の汗が感じられる話には
惹きつけられものがある。
プロの中のプロ
ゴルフ侍に登場するシニアプロで
尊敬するプロが二人いる。
一人は井戸木プロ。
日本人で初めて
世界のメジャータイトルを獲得したレジェンド。
もう一人は平石プロ。
甲子園で優勝した
伝説の高校球児だった人。
お二人とも関西人で、
飛距離の出ないプロで有名だ。
でもレギュラーツアーでは
フェアウエーキープ率ナンバー1を
お二人とも獲得している。
番組内でも派手さはないものの
仕事人ぶりを発揮する。
アマチュアゴルファーを圧倒する技の数々。
簡単に勝たせない強さ。
相手を思いやる心。
井戸木プロは過去の対戦では
どの戦いでも圧勝。
アマチュアに隙を与えず
完全勝利を収めている。
必殺仕事人
さらに道具に対するこだわりは尋常ではない。
20年前の古いクラブを使い続ける。
この古いクラブが生命線なのだ。
正解な距離を出すために
新しいクラブを使えないとのこと。
毎年クラブはどんどん性能が良くなる。
新しいクラブは誰でも使いたい。
それでも新クラブの使用をこらえ、
慣れ親しんだクラブで戦いに挑み続ける。
職人である。
普通にドライバーを打って
普通にアイアンで寄せているだけでは
トップアマチュアの猛者には勝てない。
シニアプロの中でもドライバーは安定しているが
アイアンに難をかかえている場合、
プロがアマチュアに簡単に敗れる。
恐ろしい番組だ。
この番組を見ていると強者になろうと思えば、
200ヤード前後の精度が要求される。
井戸木プロと平石プロは
二打目以降のショットが正確無比で
アマチュアゴルファーを寄せ付けない。
200ヤード前後のショットは芸術的。
対戦相手が唸っているシーンがよく見受けられる。
神業の連続にチャレンジャーの心は折れていく。
ゴルフの鬼になるための見本のような人たち。
印象的だったのが平石プロが番組の制作者に
「飛距離を伸ばすという考えは無いのですか」
と聞かれた時の返答。
飛距離を追求するとボールを曲げてしまい
プロとして飯を食っていけない。
その為に飛距離をキッパリと諦めた。
飛距離を捨ててでも正確性で勝負する。
勝つために無駄なものは容赦なく切り捨てる。
こだわりを切ってでも
ゴルフをしているものなら遠くへ飛ばすことに
こだわる人は多い。
飛距離を伸ばすために高額なクラブを
何本も手に入れる人もいるぐらいだ。
その憧れを削ってでも
手堅いゴルフをしていく。
少々の痛みを伴っても
プロゴルファーとして強く生きていくためには
大事なものを犠牲にして、
進んでいかねばならない時がある。
本物になるためには
自分の天賦の才を見極めねばならない。
それは欲求に従ってされるのではなく、
冷静な目によって
感情の入る隙のないところで行う。
どんなに飛距離を伸ばすことに
憧れを持っていても、
天賦の才がなけば
潔くあきらめなければならない。
この仕分けがきちっとできている人が
本物だ。
プロに共通する哲学。
仕分けがきちっとできている、
感情の入り込む隙のない覚悟。
だからこそアマチュアは
本物のプロにはかなわない。
人生も勝負の連続。
大事なものを切ってでも勝ちにいく。
冷徹に自分を見つめ直して
天賦の才を武器に勝負に挑む。
人生においても負けられない勝負は必ずある。