第二次ベビーブーム
何の因果か法律の勉強を始めてしまった。
始める前は怖いもの知らずで
何とかやり遂げることができるだろうと
安易な考えで始めた。
そもそも法律との付き合いは長い。
自分の苦い歴史の立役者である。
私たちの世代が大学に入学する頃は
バブルが崩壊した後で
何をするにしても受難の時代。
第二次ベビーブームが重なり
溢れかえる人間。
一学年に10クラスは当たり前。
二日にわたる果てしない運動会。
2年に一度の当番制の文化祭。
教室が足りずの増設のプレハブ教室。
当然、夏は灼熱地獄、冬は冷凍庫。
大学受験は熾烈を極める。
ある大学の学部は競争率が100倍に!
100人に一人しか合格しない。
もう、宝くじの世界である。
西川きよしの目も
メガビックである。
こんな時代では
「ドラゴン桜」
は成り立たない。
きっと全員不合格だからである。
奇跡すら起きない。
偏差値35を合格をさせようなものなら
「キン肉マン」「北斗の拳」「ドラゴン桜」
と同列の漫画扱い確定である。
倍返し
こんな世界で青春を過ごしてきた。
戦争とバブルのツケを払わされた。
まさに、ロスジェネの世代である。
そうなんです。
私たち「半沢直樹」なんです。
大学を卒業すると地獄の就職活動。
当時は上場企業に勤めるのは至難の業。
信じられないかもしれないが、
エントリーシートを最低は200社以上出せと言われた。
就職する会社はたった一社なのにである。
家には六法全書くらいの分厚い
就職用の雑誌が毎日のように届く。
家にはその手の本が山積みに。
手が折れそうになるまで、
エントリーシートを書いた。
後輩は400社にエントリーシートを出して全滅。
ノイローゼになり「ザ、ガマン」という番組に参加。
氷の上でどれぐらい耐えられるかというコーナーに出場。
一日近く耐えて、準優勝。
ペンギンも興味津々。
こんな素晴らしい特殊能力をもってしても
希望の会社に就職できない。
私はこの状況下、
就職に不利になる条件を抱えていたこともあり、
途中で敵前逃亡した。
法律家の道を目指し、
「倍返し」するために勉強を始めることに。
予備校に入学。
ローンを組んで勉強態勢に。
多額の借金を背負って、
背水の陣で臨むことに。
倍返され
勉強は遅々として進まず、
欠席者用の授業音声をダビングする毎日。
そのうちに、ダビングの達人に。
高速ダビングを駆使して短時間で複製に成功。
友人からお金を頂き、
音楽のダビングを頼まれるまでに成長。
脳への法律知識の複製には手をつけなかったが・・・・・・
ただたまっていくテープをぼーっと眺めるだけ。
苦しさから安易に逃れて
時代から「1000倍返し」されることに。
そうやってなんとなく自分が安易な道を選んできた結果、
当時、アルバイトをしていた塾の先生が本職に。
大学の授業料と生活費の捻出のためのアルバイトが
まさか自分の人生の大半を占めることになるとは。
アルバイトの延長が職業になっても
仕事が好きになるはずもなく、
アルバイト気分でダラダラ続けていくことに。
何度も離脱を図るも
いつも塾に連れ戻される。
脱走するたびに刑務所に戻る囚人のように。
気づき
しかしやっとである。
自分の職業に対して
少しずつ興味を持ち始めた。
目の前にいる子供のために
必死に教えようと思えるようになった。
本当に自分のことを信じてついてきてくれる人に対して
真心で応えていく。
こんな簡単なことがこの年齢になって
東京で孤独に暮らすようになって、
初めて感じることができるようになってきた。
囚人が宗教の教義に触れて改心していくように。