国語力
子供の国語力は受験生を持つ親の悩みの種。
特に6年生になって国語の成績が悪いとなおさらだ。
国語力の欠如が成績に直結する。
逆に国語力さえあれば、
少なく見積もっても、
6割から7割は得点できる。
まぁ6割から7割の得点を確保すれば、
国語で不合格になることは無い。
4年生までは国語の成績は悪くなかったのに、
高学年に入ると突然国語の成績が悪くなる生徒がいる。
4年生までは国語の文章に対して
目を輝かせて興味津々に話を聞いていた子供が、
5年生になった瞬間に文章に対する興味を失い、
上の空で話を聞いている。
特に男子に多い。
興味を失う原因
高学年に入ると塾では小説を扱うようになる。
教材から物語が姿を消す。
文章の質の変化が上の空を生む。
そもそも物語と小説では文章を受け取るための心の姿勢が異なる。
この準備を怠った子供に対して、
成績は容赦なくおそいかかってくる。
物語は話を読み進めて、
ストーリーを楽しむことがメインになる。
物語は単純にお話の流れを追っていけば
簡単に話全体の理解が完結する。
「こぶとりじいさん」の話など日本昔話に出てくる類のものは
偶然の成り行きで話が進んでいく。
なぜ鬼が森の中で火を囲んで宴会をしているのか。
どうしておじいさんの顎にこぶがあり、
隣のおじいさんの顎にもこぶがあるのか。
因果関係が入り込める隙が無い。
入試問題の題材にまずならない。
問題の作りようがない。
小説の正体
小説は社会問題について考えることがメインになる。
小説には作者の理想となる思想や哲学があり、
そこに向けて論理的に話が構築されていく。
先程の「こぶとりじいさん」の話で言えば、
おじいさんの顎にこぶがあることにも意味が出てくる。
老夫婦が住んでいる隣の川に大量の薬物が工場から流されて
それを飲んだおじいさんの顎にコブができた。
森林破壊が進んでいて、
その森林破壊を放置した人間に対する罰として
鬼が森の中で宴会をするという構図が生まれてくる。
何気ない一つ一つの事象に対しても
このように因果関係で結びつけ
必ず作者の意図が働いて、
話が展開していくのが小説なのである。
小学生といえども普段から人間について深く考察し、
ニュースを見て社会問題に対して興味を持ち、
表出している結果に対して原因を考えていないと小説は読めない。
女子は普段から人間関係が濃密であるため、
この点の考察がよく行き届いている。
小説を何の違和感もなく、
自分の世界に取り込むことができるのである。
精神の準備
漫画はストーリーをダイナミックに展開させて感情を煽り、
単純な興味を引き出す。
そのダイナミックな展開に複雑な因果関係は存在しない。
漫画のダイナミックな展開に慣れてくると、
小説で扱われる心情の変化や作者の思考には鈍くなる。
小説のテーマは小さく、深いところで姿を表す。
微妙なのである。
繊細なのである。
明鏡止水の心境で触れていかないと見えない世界。
受験勉強に漫画は邪魔になる。
似たような理由で推理小説もふさわしくない。
推理小説はトリックの巧妙さに重点が置かれている。
謎解きの楽しさを味わうにはいいのかもしれない。
ただ、例外はある。
松本清張氏の推理小説である。
松本清張氏の扱う推理小説は社会問題が土台になっている。
「砂の器」で起こる殺人事件の背景には
癩病患者に対する差別の問題が土台になっている。
作者の社会問題に対する考察が濃厚に出てくる話であれば、
国語力を鍛えるのには適しているといえよう。
受験対策には物語から小説への読み方の脱皮が不可欠。
脱皮に失敗すると志望校への切符は手に入らないだろう。
入試問題
偏差値の高い人気のある学校は
大人が解いても頭を抱えるような無茶な問題を出している現実がある。
精神年齢が成長していないとそもそも理解できない問題を出題する。
この精神年齢の成長は塾での指導が難しい。
精神年齢はそもそも家庭環境が大きく影響しているものである。
家庭内での会話が熟成していないところに精神年齢の成長は無いのである。
ただ大人になる過程で様々な社会に顔を出すようになると
さまざまな人とのコミュニケーションにより自然と成長は促される。
歳を重ねていけば誰でも精神年齢は成長する。
ところが中学入試はその精神年齢の成長を急がせる。
早熟を要求する。
小学生のうちから要求するのは無茶な話。
受験国語の歪みを感じる。
早熟であれば何でもよしとするこの風潮には少し疑問がある。
しかし現実問題としてこの難問をクリアしなければ
希望の学校には入学することができない。
社会の欠点をごちゃごちゃ言う前に現実を受け入れて、
なんとかしていく必要がある。
入試問題に対応するために
精神年齢の問題と国語力不足を一気に解決するために、
重松清氏の著作物を読むようにアドバイスしている。
重松清氏の著作物は幼い子が読んでもわかるような話から
大人が読んでも心を打つような小説まで幅広い。
段階を追いながら小説の読み方を身に付けていくことができる。
同じ著者の書いている文章だから
一度、文体に慣れてしまえば読みやすい。
また、重松清氏の小説は入試問題に扱われることが多く、
運が良ければ読んだものが出題される可能性がある。
では、具体的にお勧めの小説。
まずは「くちぶえ番長」
主人公は小学4年生。
主人公の前に現れた世界観の違う子供との友情を通して、
主人公が成長していく姿が描かれている。
次に「エイジ」
主人公は中学2年生の男の子。
社会問題になっている中学生の心がテーマ。
現代の社会世相を通して、
少年がどのように生きていけばいいのかを提唱する。
そして最後に「とんび」
主人公は少年を1人で育てる父親。
子供が幼い時に妻を事故でなくし
1人で子供を育てていく奮闘記。
様々な人の協力を得ながら立派に子供を育てていく父親の話。
人との心の触れ合いを通し
家族の絆、人間の絆とは
どういったものかが描かれている。
読みながら作者の深く眠る人生への叫びを聞き取れるようになって欲しいところだ。