一番下のクラス
一週間に一回だけ最下位クラスを担当している。5年生のクラスである。毎回小テスト実施することになっているのだがすこぶる点数が悪い。基本的な問題しか出題されていないテストなのに、1問しか正解出来ない生徒が何人もいる。本人達は辛かったでしょう。全体で点数を確認する時、周りを気にして彼らは小さくなっていました。
当然、満点を取って意気揚々と手を挙げて褒められる生徒もいる。丁寧に課題に取り組み、全てを記憶してくるのは本当に大変だったと思う。好きでもない勉強のために遊ぶ時間をかなり犠牲にしてきたのだと思うと胸が痛いです。
落ちこぼれ
2月に学年が変わり新しい授業にも慣れてきた頃です。この辺りからクラスの中にも大きな格差が出てきます。中位帯から上位のクラスにはこういった格差は見られません。しかし、最下位クラスではこの時期から最下位層の生徒がほとんど宿題をしなくなります。呆れるぐらいしてこない。そのために力をつける子供との差が開いてきます。
テストが悪いと周囲の大人は子供に厳しくあたります。家で両親に叱責をされる子供がいれば、塾で先生に本気で怒られる子供もいます。宿題をやろうと思っても体が動かず出来ていないことに心を痛めている。本当に辛いのは本人です。やらなければならないという思いを毎日抱えて、ビクビク過ごしています。
長期間の闘い
5年生からこの生活をしていくと約2年もの間、さまざまなストレスにさらされ続けることになります。周りの生徒からは馬鹿者扱いされ、自分の本当の姿を忘れていく。勉強という狭い領域に押し込められて価値観が歪んでいきます。中学受験を終えても、劣等感にさいなまれ、テストの度にトラウマに襲われる。自分本来の力が出し切れません。こんな不幸の連鎖を味わわせてはいけません。
追い詰められると勉強どころの話ではなくなり、自分の身を守るために心を閉ざしていきます。他の分野ではダイヤの原石であるにもかかわらずに。特に塾で落ちこぼれている子供ほど才能を持っているものです。特殊な才能であるため、普通の人では到底気づけない。
親よ才能に気付け!
過去に教えた生徒の中には、勉強は出来ないけれど絶対音感を持っていたり、仕草が豊かで舞台人としての素養を持っていたりと他の子供が持っていない豊かな感性のある子たちがいました。そういった子供たちが塾という自分には合わない世界に閉じ込められその感性を発揮するどころか、周囲の大人や級友たちから完全否定されて小さくなっています。
大人がこの才能を拾い上げなくてはいけません。受験だけが全てではない。今の世の中はやる気と才覚さえ有れば、稼いで生きていくことができる。一般の人にさまざまなプラットフォームが用意されているからです。もう勉強だけの狭い領域に子供を押し込める時代ではありません。彼らに本当の姿を取り戻してほしいというのが私の本音です。