本当にいい子です
関西で受験指導していた時にある優秀な女の子がいました。成績はトップクラスで、努力を惜しまず、何事もコツコツ取り組む受験生の見本のような生徒でした。気立もよく友達のことを思いやれる優しい性格です。教室にその子が座っているだけで教える側もやる気が出てしまう。思い入れの強い生徒の一人でした。
問題に取り組んでも当然、周りの生徒よりも早く終わってしまいます。そしてもたもたしている生徒を待っている間、他の生徒の様子をキョロキョロと伺い、困っている生徒にアドバイスをしていることもありました。こちらとしても遅い生徒に目がいき、その子の行動を自然に受け入れていました。
いよいよ受験シーズンを迎えて関西の最難関校を受験することになり、職員もその子には大いに期待していました。受験当日の校門前の応援では緊張している様子もなく、握手を交わして堂々と入試会場に消えていく後ろ姿を見送りました。後日、試験の手応えを聞くために電話をしてみると明るい声で心配ないとのことでした。
嘘だといって!
ところが結果は不合格。結果を聞いた職員は一様に信じられないと口にしました。原因究明の緊急会議で授業中にキョロキョロするのが悪かったのではないかという意見が出て、なるほどと思いました。そういえば辺りを見回す行為は見方によってはカンニングと誤解されてしまいます。過去にもカンニング癖のある生徒が不合格になっているのを何度も見てきました。
気付いた時には手遅れです。本当に悔やみました。授業中にキョロキョロする癖を注意しておけばよかったと。中学受験のチャンスは生涯で一度きりです。二度と受けることは出来ません。結局その子は滑り止めに受けた他府県の中学に進学。数回電車を乗り換えて、不便な場所に通学することになってしまいました。憧れの学校に進学してやりたいことをいつも語ってくれていたことを考えると、胸が締め付けられる思いでした。受験後に家族揃って挨拶に来た時のその子の顔がいまだに忘れられません。
続々増殖、カンニング竹男とカンニング竹子
毎年、カンニングの癖を持っている子供は一定数います。いくらテスト前に注意しても治りません。病気ですね。特に女の子に多い。大人しく表立って問題を起こしているわけではないので、注意されることに対しての免疫がありせん。そのために注意されたことに過剰に反応してしまい事態が深刻化します。小狡い子供のケースは親に泣きつきクレームに発展させます。そして子供のつまらない嘘で塾と家庭の関係が悪化して、泥沼化していきます。
塾も企業化しているところが多くなり、各校に生徒数と売り上げのノルマを課しています。退室につながるクレームには特に敏感です。カンニングの疑いをかけられたといったクレームはすぐに退室につながる事案なので、各校舎の管理者は嫌がります。そうなるとカンニングをしていても、うやむやにして個人的な注意を出来るだけやめて欲しいとお願いしてくる校長も出てきます。
校長の意向に従った結果、その校舎ではカンニングが横行します。先生も見て見ぬ振りです。当初は癖のなかった子供までがカンニングを覚える。個人的に怒られないのだから当然です。さらにライバルが卑怯なことをして良い点をとっていることぐらい子供は肌感覚で分かりますから、負けじと保身のために人の解答を見るようになります。当然そんな文化が育まれた校舎の結果は見るも無残。利益主導が行き過ぎると教育の本質を見失うようです。
無駄使い
可哀想なのは通っている生徒と保護者。塾の文化の巻き添いを食らって、第一志望校の合格はおろか滑り止めにも落ちる始末。一生懸命親は子供の受験を応援し、何年も塾に通わせて莫大なお金をドブに捨てていきます。
普段から子供が何気なく話す塾での話には耳を傾けておきたいところです。子供の話から塾の文化を感じることができます。少しでも違和感を持ったら情報を集めて転塾させるのが得策です。子供がどんなことでも話せる環境作りはリスク回避には必須条件になります。